『 十条村役場 観光課だより 』

         幻の縁日〜上十条1丁目・馬頭観音秘話〜

まいど十条村へお越しいただき誠にありがとうございます。
今日は縁日のお話でございます。十条で縁日といえば、何といっても「お冨士さん」でしょうね。
十条銀座でも、もうすぐ恒例・夏の縁日が開催されます。5月には「ちびっこ縁日」もあります。
子供のころに連れて行ってもらった縁日の記憶は、誰の心にも不思議と鮮明に残っているものでございます。
◆ ここに古い縁日の記録があります。大正10年に王子警察へ提出された文書です。


露店出店願(飛鳥山博物館所蔵「榎本仁一家資料」)部分
  


      露 店 出 店 願

文化九年中ヨリ建設相成タル北豊島郡王子町大字下十条千五百拾七番地先馬頭観音堂、今般改築ニ付、
尓来、別紙ノ方法ニ因リ毎月縁日ヲ開催、露店出店致度候間、御許可被成下度、有志者連名此段、
奉願上候也   大正拾年九月八日
    東京府北豊島郡王子町大字下十条千五百拾弐番地   榎本 光太郎 /
    仝上 千八番地   榎本 藤太郎/仝上 千五百拾壱番地   榎本 作太郎
王子警察長  警視  勝田 誠一 殿

    方  法
一、露店出店ノ時(縁日)  毎月 九日  十九日  両日
一、場所  下十条千四百七十六番地先ヨリ下十条千五百十八番地迄ノ間 片側/二百五十間
   但シ縁日ノ当日片側交対
一、出店時間   自 午後六時   至 午後十一時
一、露店跡道路掃除方
   露店閉店後ハ右出願人三名ノ雇人ヲ以テ道路ノ掃除ナシ露店出店者ヨリハ掃除料ヲ集金セズ


◆ 何しろ大正時代の文書ですから、少々読みづらいかもしれませんが、これは現在の上一本通りで馬頭観音の縁日を再興した時の記録です。馬頭観音というのは、十条駅の大踏切り近くにあるコンビニの横を曲がると、右側の道端に立っている石仏のことでございます。
 庚申塔と並んで、今も小さなお堂に入っていますが、大正10年にその当時のお堂を改築した際、地元の有志が縁日を復活させようと立ち上がり、警察署に許可を願い出たというわけです。添付書類に依ると、縁日はもともと江戸末期から明治初年頃まで続いていたそうですが、時勢の変動で中断していたといいます。


露店出店願添付地図(上十条1丁目・区役所通り)
◆ それにしても、毎月9日と19日の2回も縁日があったなんて楽しそうでございますね。今でも地元のお年寄りに話を伺うと、当時のことをご記憶の方が少なくありません。添付図面によれば、露店が並んだのは現・水道局前の1ブロック間、約150メートルでございました(文書中に「二百五十間」とあるのは誤記か?)。


現在の馬頭観音と庚申塔(上十条1−10)


現在の上一本通り
◆ こうして復興された縁日ですが、その後、戦争によって再び中断され、そのまま現在に至っています。「まちおこし」とか「まちづくり」という言葉の無かった時代にも、まちの人々は様々なイベントを企画して、まちの発展を願ったのでございますね。


今日は「縁日」のお話をいたしました。
本来の「縁日」とは、仏様ごとに定められた日、その神仏と縁を結ぶためのメモリアルデーでした。
それが、いつしか参道に並ぶ露店のことまで「縁日」と呼ばれるようになりました。
露店といえば縁日、縁日といえば露店、なのですね。
さて、次回はどんなお話をいたしましょうか。
またのお越しをお待ちしております。


※ 尚、今回の文章を書くに当たり、上十条1丁目西町会の小林前会長、および飛鳥山博物館のご協力をいただきました。記して御礼申し上げます。